アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file 44

ほぼ月イチコラム アビコ青年のネオ・ディベート事件簿 file 44

本日のテーマは「ふたたび思いが通じる日まで」です。

■小樽で出会ったパトスの神

パトス情熱)といえば、今でも思い浮かべる人がいます。
小樽で出会った人力車の俥夫、通称「もんちゃん」。
以前、観光で写真のベストスポットを求めてウロウロしている私に、
すかさず声を掛けてきました。

「お兄さん!最高の撮影スポットと感動をお届けしますよ!
 これも運命!ぜひ一度乗ってみて下さい!!」

真剣な表情で訴え続ける彼の提案に、
私は乗ってみることにしました。

―― 最高でした。
小樽の街を、風のように駆け抜けました。
古びた町並みは、彼の熱い想いをこめた言葉に包まれて、
瞬く間に「レトロな風景」に生まれ変わりました。
栄枯盛衰の歴史が目の前で蘇っていきました。

何より私の心を掴んで離さなかったのは、
情熱溢れるその声!表情!その仕草!
まさにパトスのお手本でした。

掲載許可を頂いたので、写真を添付します。
迫力、少しは伝わりますよね?

パトスだけでは通用しない現実

彼はパトスの神でした。
(もちろん、分かりやすい解説=ロゴスも素晴らしかったです)
では、パトスがあれば、人は説得されるでしょうか?
当然ながら、そんなことはありません。

最近、マスコミを騒がせてしまった乙武洋匡氏。
騒動以前は、聡明な頭脳と明るい性格で、
コメンテーターも務めるほどの「説得力のある」人でした。
障がいをものともせず、懸命に生きるその姿に多くの人が引きつけられました。

ですが、今はそうはいきません。
どんなに筋道立てて発言しても(ロゴス)、
どれほど神妙な表情で謝罪の言葉を述べても(パトス)、
多くのマスコミが否定的なコメントを出します。

「神妙な顔をしていますけど、計算高いですよ」
「そもそも何でパーティを開く必要があるんですかね?」

結局、何をやっても裏目に出る状況です。

言うまでもありませんが、ロゴスパトスを素直に受け入れてもらうためには、
日頃から積み重ねたエートス(人としての信頼)が必要です。
氏のエートスが崩れた今、
残念ながら何を言ってもしばらくは認めてもらえないでしょう。

五体不満足 完全版 (講談社文庫)

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■言葉に宿る「魂」は存在する

冒頭のもんちゃん、
彼は積み重ねてきた経験と、小樽への熱い思いを語ってくれました。
真剣に生きている人の言葉には、その人の生き方が宿っています。
だからこそ、その言葉には重みがありました。
その証拠に、今でもあの日の記憶が色鮮やかに残っています。

とっておき!  小樽さんぽ

とっておき! 小樽さんぽ

エートスは地道な日常の積み重ねです。
人を絶対に裏切らない、約束は守る、嘘はつかない、
筋は通す、裏表のない言動をする、等々。

そんな行為を含めて、「超一流の、自分の磨き方」(太田龍樹著 三笠書房)の帯にある言葉は、エートスを端的に表現しています。

「結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか?」

エートスを身につけるには、
毎日、愚直に何かを積み重ね続けること。
それができる人が、いずれ大きなエートスを宿し、
一流と呼ばれる存在になれるはずです。

余談ですが、
社会的制裁を受けるべき状況なのは大前提の上で、
私は乙武氏の再起に期待します。

行動力、発言力、発信力、
そのどれもが素晴らしいものがあります。
普通なら自ら多くを諦めるかもしれない、
そんな状況をものともせず、はねのけてきた乙武氏。
障がい者が活躍できる社会を作る先駆者として、
社会に復帰できる日を目指して頑張って欲しいです。

乙武氏の言葉に、再びエートスが宿る日を願いながら。

以上
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